遺品整理の基礎知識。処分してはいけないものやNG行為を解説
家族が亡くなった後には、遺族が故人の住んでいた部屋や家を片付け、遺品整理を行います。遺品整理は、単なる片付けや掃除ではなく、故人亡き後のさまざまな手続きを行うためにも非常に大切です。ただの片付けだと思ってどんどん処分していると、中に大切な書類や情報が紛れていて、後々手続きの際に苦労することになるかもしれません。
ここでは、遺品整理の方法や注意点を詳しく解説します。残された家族だけでなく、終活を意識し始めた方にとっても役立つ情報です。ぜひ元気なうちから遺品整理の基礎知識を蓄え、将来に向けて準備を進めましょう。
遺品整理を行うタイミング
家族が亡くなった後に、故人が住んでいた部屋や家を片付け、不要なものを処分したり形見として親族で分けたりすることを「遺品整理」と言います。遺品整理を行う時期に決まりはなく、各家庭の事情に合わせて行います。ただし、賃貸物件に一人で住んでいた場合は賃料がかかってしまうため、あまり長期間放置はできません。また、持ち家の場合でも、人が住まなくなると室内に湿気がこもってカビが生えるなどして建物の老朽化が早まります。早い段階で親族間で話し合い、計画的に遺品整理を行いましょう。
遺品整理はいつ行う?
- 四十九日や一周忌などの法要後
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遠方の親族がいる場合、普段から集まることは難しいもの。親族が一堂に会する法要の後に行うのが一般的です。
- 遺産分割が終わった後
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遺産相続の対象物には、現金や不動産だけでなく、故人が使っていた家具や家電も含まれます。そのため、一部の親族だけで遺品を処分してしまうと遺産分割トラブルに発展することも。遺言書がある場合は遺言書に従い、ない場合は遺産分割協議を行って相続財産の分割を終えてから遺品整理を行います。
- 時間をかけて少しずつ整理する
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遺族の気持ちが落ち着いていなければ、一気に遺品を片付けるのは困難です。不要品であっても捨てる気持ちにはなれないでしょう。持ち家などで遺品整理を急ぐ必要がないのであれば、故人の思い出を振り返りながら、少しずつ片付けるという方法もあります。片付けているうちに少しずつ気持ちが落ち着いていくと良いですね。
相続放棄する場合は遺品整理を行うことはNG
相続財産の中に、借金などの負の遺産が含まれていて相続を放棄したい場合は、手続きが終わるまでは遺品整理を行ってはいけません。たとえば、家具や家電などを不要品買取に出したり預貯金を引き出したりすると遺産相続の意思があると見なされ、相続放棄できなくなってしまいます。
なお、相続放棄の期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則3ヶ月間です。この期間内に手続きをしなければ、相続放棄ができなくなるので注意が必要です。
遺品整理で捨ててはいけないもの
遺品整理で気を付けたいのが、「捨ててはいけないもの」があるということ。単に、遺族にとって「必要」か「不必要」かだけでなく、法律上または手続き上必要なものも多いため、慎重に判断することが大切です。捨ててはいけないものの代表的な遺品をご紹介します。
遺言書
遺言書には、遺産分割について記されており、相続人は原則として遺言書に則った遺産分割を行うことになります。それだけでなく、遺言書は法的拘束力を持つため、遺産分割が完全に終わるまでは捨ててはいけないし、勝手に開封してもいけません。見つけたら未開封のまま大切に保管しておき、必ず家庭裁判所で立会人の元で開封する必要があります。万が一捨ててしまった場合は、親族間での相続トラブルに発展することがあります。
現金
家具を処分する際に、現金が入っていることに気づかずに誤って捨ててしまう可能性があります。タンスや机の引き出し、本棚、額縁の中などに入っているケースが多いため、心当たりのある場所は全て確認しましょう。なお、現金は相続財産として見なされ、相続税の課税対象となります。勝手に持ち出したり隠したりせず、一つにまとめて置いておきましょう。
預金通帳
口座名義人が亡くなるとその口座は凍結されるため、その後、遺族が現金を引き出す際の手続きで預金通帳が必要となります。また、通帳の記帳内容から故人のサービス契約関係が分かることもあり、各種サービスの解約にも役立ちます。なお、最近ではインターネットバンキングを利用していて預金通帳が発行されていないこともあります。この場合は、デジタル遺品の項を参考に情報の保護を行いましょう。
印鑑(届出印)
故人が手続きや契約に使った印鑑は、サービスなどの解約を行う際に必要となることがあります。会社を経営していた場合は会社の実印や銀行印も非常に大切となるため、生前から保管場所を聞いておくことをおすすめします。
契約書類
賃貸住宅や不動産の契約書類、生命保険証書、有価証券など、各種証書や証券、契約書は解約時や名義変更を行う際に必要になる重要な書類です。最近では契約書類が電子化されていることもあるため、パソコンの中も調べた方が良いでしょう。
身分証明書や身分証明カード
運転免許証や保険証、マイナンバーカード、パスポートなどは返却が必要です。故人の死後何日までに返却しなければならないといった返却期限が設定されているカードもあるため、確認しておきましょう。なお、上述した契約書類に関して解約時に身分証が求められる場合もあります。返却する前に契約先に問い合わせ、故人の身分証が必要かどうかを確認しておきましょう。
支払通知書
公共料金やサービス等の支払い通知書や督促状などをゴミと間違えて捨てないように注意しましょう。解約し支払い停止の手続きを行わなければ、いつまでも料金が発生してしまいます。また、通知書や督促状を手がかりに契約先に問い合わせることで、故人が使っていた口座を調べることもできます。
デジタル遺品
スマートフォンやパソコンには、たくさんの個人情報が残されているはずです。メールやインターネットのお気に入り登録サイトなどからネットバンクの情報や証券取引、月額サービス利用などの有無を把握できるので、調べてみましょう。特に会社を経営していた方なら重要な情報が残されている可能性があるため、会社の人にも協力してもらい、慎重に取り扱う必要があります。
美術品や貴金属
美術品や貴金属など価値のあるものも相続財産の一つです。相続人の了承なしに処分してはいけないし、相続税の対象ともなるため、次のような、価値が高いと思われるものは専門家に鑑定を依頼しましょう。
- 骨董品
- ネックレスや指輪などの貴金属
- 故人が趣味で集めたコレクション
- 着物
- 家具や家電関連
レンタル品
故人が日常的に使っていたものであっても、所有ではなくレンタル品の可能性があります。これらは解約し返却する必要があります。レンタル品の場合は契約先のシールなどが貼られていることが多いものです。このシールや口座の引き落とし情報などを手がかりに、契約先に連絡し、解約・返却手続きを行いましょう。
一般的に多いレンタル品は、次のようなものです。
- Wi-Fiルーター
- 車椅子などの福祉用品
- ウォーターサーバー
- 車
手紙や年賀状
手続き上必要ではなくても、残しておくことで故人の友人、知人関係を知ることができ、訃報や形見分けなどの連絡を入れる際に役立ちます。
遺品整理の進め方
実施日を決定する
一部の親族のみで行うと、遺品の処分をめぐってトラブルになることがあります。できるだけ関係する親族が多く集まることができる日を設定し、話し合いながら整理を行いましょう。
必要なものと不要なものに分ける
相続に関わる書類や貴重品など、処分してはいけないものはあらかじめ選別し、保管しておきます。そのほかにも、使えるもの・使えないもの、いるもの・いらないものなどに分けます。
不要品を処分する
使えないものやいらないものは「ゴミとして処分する」「買取業者に買い取ってもらう」などして処分します。ゴミとして処分する場合は、自治体の定める方法に従って処分します。ゴミの量が大量になる場合や家具などの大型ゴミの場合は別途料金が発生することがあるので、捨てる前に自治体に確認することをおすすめします。
買取業者に買取を依頼する場合は、正しい方法で確実に処分してもらえるよう、信頼できる業者選びをしましょう。中には不法投棄を行う悪質な業者も存在します。
遺品を親族で分配する
遺品を遺族で分配したり、思い出の品を形見分けしたりして、遺品を分けます。供養したい遺品は、神社仏閣のお焚き上げなどで供養してもらいます。
部屋を原状復帰するには「オゾン除菌・脱臭サービス」
長年住んだ家や部屋となると、掃除をしてもにおいが残っていたり、エアコンからカビ臭がしたりと衛生面が気になることも多いでしょう。特に賃貸住宅の場合は原状復帰が求められるため、必要に応じて「オゾン除菌・脱臭サービス」の利用を検討することをおすすめします。これは、化学の力で部屋中をすみずみまで除菌してくれるサービス。化学と言っても自然界にも存在する「オゾン」で除菌・脱臭するため安心です。
オゾン除菌・脱臭サービスとは?
機械で大容量のオゾンを発生させ、部屋中をすみずみまで除菌・消臭します。部屋に残存するオゾンは機械で回収し、分解。5〜10分後、部屋を換気したら除菌・脱臭の終わりです。所要時間は10〜20分程度と非常に短時間です。
オゾンとは?
酸素は化学式では酸素原子が2つくっついた「O2」と表記されますが、オゾンは「O3」と表記されます。オゾンは紫外線による酸素分子への作用によって発生するため、自然界にも存在しています。
オゾン分子は、悪臭やウイルス、菌などに触れるとその物質と結合します。これを「酸化」と言い、脱臭や殺菌の効果をもたらします。3つの酸素原子のうち、結合に使われるのは1つで、残りの2つの原子は自己分解して「O2」つまり酸素となります。 オゾン脱臭中は室内のオゾン濃度が高くなるため入室はできませんが、除菌・脱臭後は残存するオゾンは機械によって回収されるため、人体に害を及ぼす心配がありません。
オゾンによる除菌・脱臭はこんなところで利用されています
オゾンは脱臭・殺菌効果が強力で、かつ安全性が高いため、さまざまな場所で脱臭や殺菌、洗浄などに活用されています。
- 保育園や幼稚園
- 学校などの教育施設
- 水道の浄水処理
- 病院やクリニック
- 中古車、レンタカーなどの車内
遺品整理の負担を軽減するために生前中にできること
遺品整理は、遺族にとって心理的・身体的な負担が大きいものです。また、遺族が間違えて大切なものを捨ててしまうリスクもあるため、できるだけ本人の生前中に身の回りのものを整理しておくことが大切です。
参考記事:「生前整理」で身の回りのものを整理。そのメリットと具体的な方法
エンディングノートに「何がどこにあるか」「暗証番号やパスワード」などを記しておき、後々、のこされた家族がスムーズに片付けられる状態にしておくことがベストでしょう。「元気なうちから遺品整理の話をするなんて縁起でもない」と感じられるかもしれませんが、身の回りのものを整理することは、セカンドライフを前向きに生きる上でも大切です。何をどのように片付けるのか、大事なものはどこにあるのかを事前に家族で話し合っておくことをおすすめします。