形見分けの方法は?タイミングや贈るときの注意点を解説
家族が亡くなった後には、故人が使っていたものを片付ける遺品整理(「遺品整理の基礎知識。処分してはいけないものやNG行為を解説」)を行います。これと似たものに「形見分け」があります。形見分けとは、故人の愛用していたものを親しかった人に贈る慣習のこと。しかし、何でも贈って良いというものではなく、形見分けに適したもの、適さないものがあります。また、行うタイミングやマナーを知っておくことも重要です。ここでは、形見分けの方法や、形見分けを行う上で注意するべきポイントを解説します。
形見分けとは。遺品整理との違い
遺品整理が故人の家や使っていたものを片付け、整理することであるのに対し、形見分けとは、故人が生前に愛用していた品や思い出の品を親族や故人と親しかった人に贈る慣習です。必ず行わなければならないというものではありませんが、受け取った人は、その品を心のよりどころに故人との思い出を偲ぶことができます。
形見分けの品として適したもの・適さないもの
形見分けには、贈るのに適したものとそうではないものがあります。基本的には受け取る人の身になって考え、喜ばれるものを贈ることが大切です。
形見分けの品として適したもの
→ 衣類、カバン、アクセサリー類、文房具、趣味のコレクション、故人と一緒に写っている写真など
故人が使っていたバッグや指輪、万年筆などがよく形見の品として贈られます。また、着物など本来の品をリメイクして、より受け取る人の好みにあった形で贈ることもあります。
贈らない方が良いもの
→ ペット、高価な品、現金、壊れているもの
ペットなどは事前に約束がないかぎり、受け取る側が困るのでやめておきましょう。また、あまりに高価な品は受け取る側の心理的な負担が大きくなります。特に110万円を超える価値の品は贈与税がかかるため、贈らないようにしましょう。現金や金券なども財産分与にあたることがあるため、注意が必要です。そのほかにも、壊れているものや破れているものなどは、よほど思い入れが強い場合を除き、避けた方が良いでしょう。
現金を形見分けしてもいい?
現金は財産分与にあたる可能性があるため、本来は避けるべきです。しかし、故人の強い希望があれば形見分けを行うこともあります。贈るときは、無地の白封筒に包み、故人の意向で形見分けをする旨を相手に伝えて渡しましょう。
形見分けのタイミング
四十九日などの法要後に行うのが一般的ですが、宗派によって「忌明け」の決まりが違います。それぞれに適した時期があるので、確認しておきましょう。
- 仏教
四十九日の法要後や一周忌などの節目に行うのが一般的です。 - 神道
「三十日祭」「五十日祭」と呼ばれる霊祭の後に行うのが一般的です。 - キリスト教
形見分けの習慣はありませんが、30日目の追悼ミサの場で形見分けを行うことが多いようです。
形見分けの方法
形見分けの品はプレゼントのように包装したりはせず、半紙などの白い紙で包み「遺品」「偲び草」などと表書きをして手渡しをするのがマナーです。
また、汚れているものはクリーニングに出し、時計などのメンテナンスが必要なものは動作確認を行った上で贈るようにしましょう。
形見分けを行う際の注意点
- 目上の人には贈らない
-
最近では年齢に関係なく形見分けを行うこともありますが、基本的に形見分けは親から子へ、兄や姉のものを弟や妹へと贈るものです。目上の人には贈りません。ただし、目上の人であっても受け取る本人が希望するのであれば、贈っても問題ありません。
- 贈る前に親族間で話し合う
-
形見分けの品には、宝石や骨董品など、資産価値のあるものが選ばれることもありますが、これは相続人にとっては相続財産の一部です。そのため、遺産分割をしっかりと終えた後に形見分けを行わないと、トラブルに発展することもあります。親族全員が納得できるように話し合いを行ってから、誰に何を形見分けするかを決めましょう。
- コレクションや美術品は鑑定を行う
-
故人が蒐集(しゅうしゅう)していたコレクションや絵画や骨董品などの美術品は、形見分けを行う前に専門家の鑑定を受けましょう。高額な品は贈与にあたり、税金が発生する可能性もあります。
- トラブルになりそうなときは、贈る相手に優先順位をつける
-
故人が生前に、一つの品を複数の人に「私が死んだらあげるよ」と口約束をしてしまっているケースもあります。このような場合は、故人との血縁関係が深い人や親しかった人に優先的に贈るのが良いでしょう。
生前の形見分けという方法も
亡くなってからではなく、生前中に故人が親しい人に形見分けを行うケースもあります。誰にどの品を贈るかを自分の意志で決めることができ、親族間のトラブルにもならないことが大きなメリットです。また、受け取る側に形見分けの品を選んでもらうこともできます。
ただし、110万円以上の価値のあるものは贈与とみなされ、贈与税が発生するため注意が必要です。
よく話し合い、形見分けトラブルを防ぎましょう
相続と同様、形見分けは親族間のトラブルを招きやすい慣習です。しかし、本来故人を偲ぶために行うはずの形見分けがトラブルの種になってしまっては、本末顛倒です。トラブルが収まりそうにない場合は形見分けは行わず、棺の中に入れてしまうのも一つの手でしょう。
いずれにせよ、心穏やかに故人を偲ぶことができるように、親族でよく話し合ってから何を形見分けするのか、誰に贈るのかを決めることをおすすめします。