サービス付き高齢者向け住宅とは?サービス内容や費用、メリット・デメリットを紹介
サービス付き高齢者向け住宅は、「サ高住」という呼び名で広く知られており、日本全国に数多く存在します。しかし、実際にどのような施設をサ高住といい、どのようなサービスを提供しているのか、どんな人が入居しているのか、といった具体的な情報についてはご存知でしょうか?「生活に制限がありそう」「費用が高そう」というイメージもあるかもしれませんね。
そこでここでは、サービス付き高齢者向け住宅の入居条件やサービス内容、費用のほか、介護付き有料老人ホームとの違いなどをご紹介します。入居を検討する際の参考にしてください。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは
サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)とは、高齢者が安心して暮らせるように建てられたバリアフリー設計の賃貸住宅で、介護施設や医療機関と連携して安否確認や生活相談などのサービスを提供しています。入居者は自立〜要支援、または要介護度の低い方が中心で、介護付き有料老人ホームと比較すると生活に制限がなく、自由な暮らしを送ることができる点が魅力です。「高齢者だけの生活は不安だけど、老人ホームに入るほど介護が必要なわけではない」という方にはピッタリと言えるでしょう。
近年では施設数が増えており、それぞれに特徴を出して充実した生活空間を提供しています。選択肢が多く、入居待ちになりにくいこともサ高住の特徴です。
サ高住は「一般型」と「介護型」の二種類
サ高住は、自立した方が入居する「一般型」と、介護を必要とする「介護型」の二つに分けられ、このうち一般型が9割以上を占めています。
- 一般型
自立の方を対象としており、介護サービスが必要になった場合は外部の事業者と契約して必要な分だけサービスを受けます。要介護度が進行した場合は退去が必要になることもあります。 - 介護型
厚生労働省が定める「特定施設入居者生活介護」の指定を受けたサ高住です。要介護認定を受けた方を対象としており、24時間常駐している介護スタッフから定額で介護サービスを受けられます。また、訪問介護などの在宅介護サービスが併設されているサ高住もあります。
「一般型」と「介護型」のサービスの違い
「一般型」と「介護型」では受けられるサービスが異なります。施設による違いもありますが、一般的には次のような違いがあります。
タイプ | 一般型 | 介護型 |
安否確認 | 対応可 | 対応可 |
生活相談 | 対応可 | 対応可 |
生活支援 | 外部サービスを利用 | 対応可 |
介助 | 外部サービスを利用 | 対応可 |
リハビリ | 外部サービスを利用 | 一部対応可 |
レクリエーション | 少ない | 多い |
看取り | 外部サービスを利用 | 一部対応可 |
共通して受けられるサービス
サ高住では、日中は事業者の職員や介護福祉士、看護師、機能訓練指導員などのいずれかの職員が常駐し、安否確認と生活相談を行うことが義務付けられています。
安否確認:スタッフが定期的に部屋を訪問して入居者の状態を確認する
生活相談:介護に関する相談や心身の悩みなど、生活上の困りごとについてスタッフが相談にのり解決に向けた対応を行う
夜間は無人になる施設もありますが、緊急時には通報システムによって対応することが義務付けられているため、安心して生活することができます。
施設によっては受けられるサービス
食事提供サービス
施設内の厨房で栄養バランスの整った食事を提供する施設や、外部の業者が作った食事を施設内で温めて提供する施設、宅配弁当を提供する施設など、提供の有無や形態は施設によって異なります。また、要望を伝えることでミキサー食や刻み食など個々の嚥下能力に応じた食形態に対応してもらえる場合もあります。
緊急対応サービス
体調不良などの緊急時にはスタッフが駆けつけ、提携する医療機関との連携によって医師による往診や救急車の要請、家族への連絡を行ってもらえます。また、災害発生時にも避難誘導を行い、入居者の身の安全を守ります。
生活支援サポート
買い物の代行や外出時の付き添い、通院の送迎や宅配便の預かり、居室の保守点検など、さまざまな生活支援サポートを行っています。また、居室の掃除や洗濯などの家事代行サービスを行っている施設もあります。
介護サービス
<介護型のサ高住>
医療機関と連携し、看取りまで行ってくれる施設も増えています。ただし、要介護になると転居しなければならなくなる施設もあるため、入居前に確認しておくことが必要です。
<一般型のサ高住>
自立や要支援の方を対象としているため、介護サービスは提供されていませんが、施設によっては次のような体制で介護サービスを提供しています。
→事業所が併設されている
サ高住に併設された居宅介護支援事業所のケアマネジャーや介護士、看護師が施設に常駐し、介護・医療サービスを提供します。常駐している時間帯は施設によって異なります。中にはケアマネジャーや看護師は常駐しておらず、ケアマネジメントや看護については外部の事業者を利用するというケースもあります。
→外部の事業所を利用する
必要に応じて外部の事業所と契約し、介護士や看護師などが居室に訪問してケアを行います。
サ高住の入居・退去の条件
入居条件
入居条件は「高齢者住まい法」によって定められており、次のどちらかの要件を満たす必要があります。
- 60歳以上の高齢者
- 要介護認定を受けた60歳未満の方
施設によっては、認知症患者の受け入れは行っていません。また、身の回りのことができる自立の人だけを受け入れているサ高住もあります。
夫婦など2人で入居する場合
2人で入居する場合は、同居人にも次のいずれかの要件を満たすことが求められます。
- 入居者の配偶者(事実上のパートナーを含む)
- 60歳以上の親族
- 要介護認定を受けている親族
- 特別な理由により同居させる必要があると知事が認める者
サ高住の費用
サ高住の入居時には、初期費用と月額利用料が必要になります。
タイプ | 一般型 | 介護型 |
初期費用 | 0〜50万円 | 0〜50万円 |
月額利用料 | 10〜30万円 | 15万円〜40万円 |
初期費用
賃貸住宅でいう敷金にあたり、一般的には賃料の2〜3ヶ月分を支払います。入居時にサービス費も含めて敷金を支払う施設もあり、この場合は初期費用が少し高額になります。
月額利用料
月額利用料には居住費や管理費、水道光熱費、サービス費などが含まれます。
→居住費
賃貸物件と同じように居室の面積や設備、建物の立地などによって異なります。周辺の賃貸物件と比較してみると良いでしょう。
→管理費
食堂やホール、ラウンジなど、入居者が共同で利用するスペースの維持管理費です。
→水道光熱費
居室ごとにメーターで管理され、使用分のみを全額自己負担するケースや、水道光熱が共益費などに含まれる場合など、施設によってさまざまです。
→サービス費
スタッフが提供する安否確認や生活相談などのサービスに係る費用です。また、介護スタッフや看護スタッフによるサービス費もこれに含まれます。この金額は施設によって異なるほか、介護・看護サービスを利用する量や頻度、また認知症かどうかによっても上下します。
サ高住の設備と人員配置基準
サ高住では、設備と人員配置についてそれぞれ法律で定められている基準があります。
設備
館内は全てバリアフリー構造になっており、廊下は車椅子で通行できる幅が確保されています。手すりやスロープなども必要に応じて備わっているため、車椅子の利用者や足腰に不安のある方も安心して暮らすことができます。
- 専用スペース
一人用の居室の専用部分の床面積は原則として25平方メートル以上と定められています。この専用部分には、台所や洗面所、トイレ、浴室なども含まれています。ただし、台所や食堂が共有スペースに確保されている場合は、18平方メートルでも良いとされています。 - 共有スペース
ホールや食堂、ラウンジ、浴場のほか、レクリエーションルームやシアタールームなど趣味を楽しむ施設が併設されていることもあります。また、デイサービスや訪問看護の事業所が併設されている施設もあります。
人員配置
一般型のサ高住の場合は、日中は安否確認や生活相談サービスを提供するため、事業所の職員や介護スタッフ、看護スタッフが常駐している施設が多いですが、法律による人員基準は定められていません。一般的には、介護福祉士などの資格を持つ介護スタッフや看護師などが配置されています。
なお、介護型のサ高住の場合は厚労省による「特定施設」の認定を受けているため、次のような人員基準が設けられています。
職種 | 配置基準 |
管理者 | 1人(兼務可) |
介護スタッフ | 要介護者3人に対して1人 |
看護スタッフ | 要介護者等が30人までは1人以上、31人以上であれば50人ごとに1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼務可) |
ケアマネジャー | 1人以上 |
生活相談員 | 入居者100人に対して1人以上 |
サ高住と有料老人ホームの比較
サ高住と有料老人ホームはどのように違うのでしょうか。有料老人ホームには「介護付き」「住宅型」「健康型」の3種類があります。それぞれとサ高住を比較してみましょう。
サ高住 | 介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム | 健康型有料老人ホーム | |
施設の概要 | 自立した高齢者が安心して居住できる賃貸住宅 | 介護を必要とする高齢者が、さまざまな介護サービス受けながら居住できる介護施設 | 自立〜要介護度の高い高齢者が生活支援などのサービスを受けながら居住できる介護施設 | 自立した高齢者がアクティブな生活を送ることができる居住施設 |
対象者 | 自立〜要介護度が低い高齢者 | 介護が必要な高齢者 | 自立〜要介護度が低い高齢者 | 自立した高齢者 |
費用 |
初期費用:0〜50万円 |
入居一時金:0〜1億円 |
入居一時金:0〜1億円 |
入居一時金:0〜数千万円 |
サービス |
安否確認 |
食事の提供 |
生活支援 |
食事の提供 |
自由度が高いのはサ高住
サ高住は主に元気な高齢者を入居対象としているため、生活の制限がほとんどないことがメリットです。居室には台所や浴室もあり、プライバシーを守りながら自由な生活を送ることができます。
対して有料老人ホームは、入居者の安全を守るために外出・外泊時には事務所に連絡をしなければならないことが多く、生活の自由度が低いと言えます。
介護サービスが手厚いのは有料老人ホーム
介護好き有料老人ホームでは24時間体制で介護サービスを受けることができます。また、介護サービス費は毎月定額のため、サービスを利用することが多い要介護度の高い高齢者の方も安心です。
サ高住でも併設の事業所による介護サービスを受けられる施設もありますが、一般的には安否確認や生活相談のみ。要介護度が進行すると追加の介護サービス費がかかったり、退去しなければならなくなったりする場合があります。
費用を抑えられるのはサ高住
サ高住の初期費用は、入居時に2〜3ヶ月分の家賃に該当する金額を支払うだけで一般的な賃貸契約と大きな差はありません。一方で有料老人ホームは初期費用である入居一時金が高額なため、入居時にまとまった金額を用意する必要があります。介護サービス費もあらかじめ月額費用に含まれているため、トータルで比較してもサ高住の方が費用は抑えられると考えられます。
サ高住とシニア向け分譲マンションの比較
サ高住に似た施設に、「シニア向け分譲マンション」があります。両者の違いを比較してみましょう。
サ高住 | シニア向け分譲マンション | |
施設の概要 | 自立した高齢者が安心して居住できる賃貸住宅 | 高齢者が住みやすいようにバリアフリー設計された分譲マンション |
対象者 | 自立〜要介護度が低い高齢者 | 自立した生活を送れる高齢者 |
費用 |
初期費用:0〜50万円 |
初期費用:数千万〜数億円 |
サービス |
安否確認 |
食事の提供 |
初期費用を抑えられるのはサ高住
賃貸住宅であるサ高住の場合、初期費用として支払うのが2〜3ヶ月分の家賃です。一方でシニア向け分譲マンションの初期費用は購入費用にあたるため、数千万〜数億円の金額が必要になります。
資産として残せるのはシニア向け分譲マンション
サ高住は賃貸契約なので契約が終了すれば退去するだけですが、シニア向け分譲マンションでは所有権を得るため、利用しなくなってからも資産としての価値が手元に残り、家族に遺産として相続することもできます。
設備の充実度はシニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは富裕層向けの物件なので、館内に娯楽施設やプール、レクリエーション施設などが併設されていることが多く、設備も非常に充実しています。健康的でアクティブなセカンドライフを送りたいという方に最適です。
介護サービスはどちらも外部の事業所を利用
サ高住もシニア向け分譲マンションも、比較的元気な高齢者を対象としているため、要介護度が高くなると外部の介護サービスを利用する必要があります。
サ高住のメリット・デメリット
これまで見てきたように、サ高住は比較的健康で自由な暮らしをしたい方にマッチする施設です。しかし、他の施設と比較した時のデメリットもあります。メリットとデメリットの両方を把握しておきましょう。
サ高住のメリット
- バリアフリー設計
- 自由でプライバシーの守られた生活を送ることができる
- 安否確認や生活相談などの必要最低限のサービスを受けられる
自由な生活を楽しみながらも、安否確認などの必要最低限のサービスが備わっているため、安心して暮らせることがサ高住のメリット。ストレスを感じることなく、これまでと同様、もしくはさらに充実したライフスタイルを送ることができます。
最近では介護サービスが充実した施設も増えています。「この先介護度が上がった時のことを考えると不安」と感じる方は、そのような施設を選択すると良いでしょう。
サ高住のデメリット
- 介護サービスが必要になった場合は、外部の事業所を利用しなければならないことが多い
- 医療面でのケアは充実していない
- 一般型では要介護度が進行すると退去しなければならない場合がある
要介護度が進行したとしても住み続けられる施設は増えていますが、やはりサ高住は介護サービスのない「一般型」が主流。介護サービスの夜間対応や医療的ケアに重点をおきたい方にとっては、サ高住の自由な環境はデメリットに感じられるでしょう。
ただ、介護型であれば手厚い介護サービスを提供している施設もあるため、立地などの条件が合えば選択肢として考えることができます。
サ高住の選び方
サ高住は数が多く、設備の充実度や費用も施設によってさまざまです。施設を選ぶ際には、どのような点に気をつけておけば良いのでしょうか。施設選びに失敗しないために、最低限チェックしておくべきポイントについて解説します。
立地・アクセス
サ高住に入居するということは、施設で暮らすだけでなく、その町で暮らすということです。現在の住まいに近い慣れた場所なら問題ありませんが、市町村をまたいだ引っ越しになる場合は、その町についても知っておくことが大切です。駅までのアクセスや周辺の商業施設や医療機関、銀行など、不便なく暮らせる環境があるかどうかをチェックしておきましょう。
サービス
必要としているサービスが提供されていることは、入居の絶対条件です。安否確認と生活相談は必ず提供されていますが、他にも生活する上で必要なサービスがある場合は、利用の可否や費用について確認しておきましょう。
逆に、サービスが必要ない場合でも、充実したサービスが提供されていることで無駄な費用がかかってしまう場合もあります。サービスに過不足のない施設を選ぶことが大切です。
費用
初期費用や月額利用料を確認しておくことはもちろん、月額利用料の内訳や、介護サービスなど追加のサービスを利用した場合の金額も確認を。入居時点では必要のないサービスも、何年も住むうちに利用が必要になることもあります。トータルでいくら必要になるかを念頭に入れた上で契約に進みましょう。
館内設備
法律で定められた設備以外にも、館内にカラオケルームやプールなどの娯楽設備が備わっている施設があります。趣味を重視する方なら、設備が充実していることは施設選びの重要なポイントになるでしょう。逆に、施設での趣味活動を重視しない人であれば、館内設備はシンプルな方が費用を安く抑えられます。
食事の内容
食事の提供サービスがあるサ高住であれば、食事の内容もチェックを。長く住むことになる施設なので、栄養バランスが整っていて、かつ美味しい食事を食べられることは非常に重要です。見学時に試食ができるとベストです。
また、厨房での調理か宅配弁当かなどの提供方法や、「刻み食」などの食形態への対応状況なども確認しておきましょう。
入居者やスタッフの雰囲気
一般的な賃貸住宅で隣人や大家さんとの関係性が悪くなると住みづらくなるように、サ高住でも、入居者同士やスタッフとの関係性は大切です。見学に行き、他の入居者やスタッフの表情や接し方などをチェックして相性の合う施設を選びましょう。
家族とも話し合いながら施設選びを
サ高住は数が多いため、多様な選択肢の中から自分に合う施設を選ぶことができます。これから長く住むことになる場所なので、「人気の施設だから早く決めないと!」と焦らず、「選択肢はたくさんある」という心の余裕を持ち、よく比較検討してから契約をしましょう。家族間でも話し合いながら、快適で無理なく生活できる施設を選んでください。