介護付き有料老人ホームとは?サービスの特徴や費用、選び方などを徹底解説
種類の多い老人ホームの中でも、特に施設数が多くサービス内容が充実しているのが「介護付き有料老人ホーム」。介護サービスには介護保険が適用され、費用を抑えながら安心してプロの介護を受けることができます。
ここでは、介護付き有料老人ホームの特徴やサービス内容、費用などを徹底解説。他の老人ホームと比較して何がメリットで何がデメリットなのかを紹介します。ぜひ、施設選びの参考にしてください。
介護付き有料老人ホームとは
介護付き有料老人ホームは、65歳以上の高齢者を対象に、24時間体制で介護スタッフが常駐し、掃除や洗濯、食事、入浴、排泄などの介助サービスを提供してくれる介護施設で、要介護状態の高齢者が安心して暮らせるように設備面でも配慮されています。民間企業が運営していますが、設備面や人員体制等において一定の基準を満たすことで都道府県の認定を受けており、介護保険サービスを毎月定額で利用できます。
入居要件は施設によって異なり、自立から介護度の重い方、認知症の方までさまざま。看取りまで対応している施設が多く、終のすみかとして選ばれるケースも多いようです。
介護付き有料老人ホームのサービス内容
サービス内容は施設によって異なりますが、一般的には次のようなサービスを受けることができます。
食事
栄養バランスが整っているだけでなく、旬の食材を使った季節感のあるメニューや、季節の行事を取り入れた盛り付けなど、舌にも目にも楽しめる食事を提供しています。時には、お祭り風の屋台や入居者も交えたおやつ作りなど、食を楽しめるイベントも開催されます。
また、嚥下機能に応じた食形態の変更や塩分制限などの医療食にも対応しています。
生活支援
居室の清掃や洗濯などの家事のほか、緊急時対応や定期巡回、提携病院への送迎手配、買い物や行政手続きの代行など、幅広いサービスが提供されています。
健康管理、医療的ケア
日中は看護師が常駐し、検温や血圧チェック、服薬管理などの日常的な健康管理のほか、軽いケガの処置なども行ってもらえます。また、地域のクリニックや病院と提携しており、内科や歯科の定期検診や訪問診療に加え、緊急時の診療や入院などにも対応。胃ろうや人工肛門など、経管栄養や在宅酸素の管理も行なってもらえます。さらに、提携している医療機関であれば、介護士に付き添ってもらって通院することもできます。
緊急時は夜間であってもオンコール体制によって医療機関への搬送などの対応を行なってもらえますが、日常的な痰吸引や注射などについては看護師が常駐している時間によって可否が決まるため、施設ごとに確認が必要です。
レクリエーション
簡単なゲームや体操のほか、手芸やお花、書道など講師による教室やカラオケ、時には外出してお花見や観劇、紅葉ツアーなど、楽しいレクリエーションが定期的に企画されています。充実した時間を過ごすことでQOL(生活の質)を向上させるだけでなく、身体機能や認知機能の低下を防止することにもつながるため、介護度の高い方でも参加できるように工夫されています。
看取り
最期の時まで介護スタッフがケアできる体制をとっています。一方で本人や家族の意向によっては「最期は自宅で迎えたい」と考える人もいるため、早い段階から医療機関とも話し合いながら、希望に応じた最期を迎えられるよう相談にのってもらえます。
施設によっては看取りに対応していないこともあるため、入居前には確認が必要です。
介護付き有料老人ホームの種類と入居要件
介護付き有料老人ホームには、「介護専用型」「混合型」「入居自立型」の3種類があり、入居条件や設備が異なります。
<介護専用型・混合型の入居要件>
介護専用型 | 混合型 | 入居時自立型 | |
自立 |
× | 〇 | 〇 |
要支援 | × | 〇 | × |
要介護 | 〇 | 〇 | × |
介護専用型
要介護度1から利用できますが、主として寝たきりなど常に介護を必要とする方の入居を想定した施設です。夜間の介護や緊急時の対応も可能です。
混合型
介護専用型と入居時自立型の中間に位置する有料老人ホームで、自立、要支援、要介護までの全ての方が利用できます。夫婦のどちらかが自立、どちらかが要介護の場合は介護専用型や自立型に入居できないため、混合型の利用をおすすめします。
入居時自立型
要支援または要介護認定を受けていない自立の方が入居できます。入居中に要支援・要介護認定を受けたとしても退去の必要はなく、そのまま住み続けられる点が特徴です。ただし、入居時自立型の施設数はあまり多くありません。
住宅型有料老人ホームとの違い
有料老人ホームには「介護付き有料老人ホーム」のほか、「住宅型有料老人ホーム」というものもあります。住宅型有料老人ホームでも、食事や掃除、洗濯などの生活支援サービスが提供されますが、主に自立〜要介護度の低い方を対象としており、介護が必要な場合は外部の介護サービスを利用する場合がほとんどです。
介護度が低い人であれば介護サービス費を節約できるため、月額費用は介護付き有料老人ホームと比較すると安く抑えることができます。しかし、逆に要介護度が高くなったり医療的ケアが必要になったりした場合には、退去しなければならない場合もあります。
項目 | 介護付き有料老人ホーム | 住宅型有料老人ホーム |
入居一時金 | 0〜数千万円 | 0〜数百万円 |
月額費用 | 15〜30万円 | 9〜20万円 |
入居対象者 | 自立〜要介護5まで | 自立もしくは要介護度が低い人 |
介護サービス | ○ | 基本的には外部のサービスを利用 |
入居一時金と月額利用料
介護付き有料老人ホームの利用には、入居時に一括で支払う「入居一時金」と毎月支払う「月額利用料」が必要です。月額利用料の中でも入浴・排泄・食事の介助などを行う「施設介護サービス費」には介護保険が適用され、自己負担額は1〜2割(所得によっては2~3割)です。
入居一時金
一定の入居期間を想定し、家賃やサービス費の一部を入居時に前払いするものです。この時想定された期間を「償却期間」と言い、例えば償却期間が5年であれば、5年間かけて入居一時金が家賃の一部に充てられます。償却期間内に退去となった場合、使われなかった差額は返金されます。
入居一時金は0〜数千万円と、施設の立地や設備の充実度、サービス内容などによって大きな差があります。入居一時金が0円の施設もありますが、その分月額利用料が高くなる傾向にあり、トータルで見た時の利用料から判断することが大切です。
月額利用料
月額利用料は毎月支払う料金で、内訳は次のようになっています。
- 管理費
水道光熱費や設備の維持・管理にかかる費用、事務費用などが含まれます。 - 介護サービス費
職員による入浴や排泄、食事の介助などの介護サービスにかかる費用で、介護保険が適用されます。介護付き有料老人ホームでは、介護度に応じて毎月定額となっているため、回数が増えても介護サービス費が増えることはありません。ただし、施設が定めている基準を超えた場合は全額自己負担となるので注意が必要です。 - 居住費
家賃に該当する費用で、同じ施設内でも居室の広さや設備に応じて変わります。 - 食費
食材や維持管理にかかる費用です。 - 日用品費
施設内で購入した歯ブラシやおむつ、石けんなどの日用品にかかる費用です。私物を利用すれば日用品費はかかりません。 - サービス加算
介護サービスの他に、法定より多くのスタッフを配置し手厚いサービスを提供している場合に加算される費用です。
上記のほかにもレクリエーションにかかる費用や、訪問診療や病院で受診した場合の医療費、理美容にかかった費用などが月額費用として請求されます。
医療費控除は対象外
年間で10万円以上の医療費を支払った場合に適用できる医療費控除は、介護付き有料老人ホームのケアに対しては適用外になります。ただし、施設内で医師による診療を受けた際の治療費などは医療費控除の対象となります。
施設内の設備や職員の配置
介護付き有料老人ホームの設備は充実していることが多く、快適に毎日の生活を送ることができます。ただし、設備が充実しているほど入居費用も高額になるため、何を優先したいかを考え、取捨選択することをおすすめします。
設備内容
- 居室
ほとんどの施設で個室が採用されており、室内にはトイレや洗面台のほか、浴室が備わっていてプライバシーを確保した生活を送ることができます。また、夫婦で入居する方達のために、2人部屋が用意されている施設もあります。 - 共有スペース
共有スペースのほとんどの場所に手すりやスロープが設置され、廊下は車椅子が通れる幅が確保されたバリアフリー設計になっています。
館内にはロビーや食堂、浴場、機能訓練室など、入居者が共同で使うスペースが完備されています。特に共有スペースの浴場には、介護仕様の特殊な機械浴が備わっていることが多く、寝たきりや車椅子の方でも入浴できるようになっています。また、ラウンジや庭、図書館、プールなど充実したセカンドライフを送ることができる設備が整っている施設もあります。
職員の配置
介護付き有料老人ホームには、施設長、生活相談員、看護職員、機能訓練指導員などさまざまな職種の配置基準が定められています。
管理者(施設長) | 1名 |
生活相談員 | 入居者100人に対して1人以上 |
看護師 | 入居者30人までは1人以上。入居者が50人増すごとに1人追加 |
介護士 | 看護師と併せて要介護者3人に対して1人以上(常勤換算) |
機能訓練指導員 | 1人以上(常勤換算) |
ケアマネジャー | 1人以上(常勤換算) |
管理栄養士 | 配置基準なし |
事務員 | 配置基準なし |
それぞれの職種の役割は次の通りです。
- 管理者(施設長)
施設を管理・運営する管理者は、入居者の生活の安心と満足を高めるために、施設全体を見渡したさまざまなマネジメント業務を行います。経営面だけでなく、高齢者介護に関する深い専門知識を有した人が就きます。 - 介護職員
24時間体制で食事や排せつ、入浴など、日々の生活介助を行います。入居者にとって最も近い存在なので、困りごとや質問があるときも気兼ねなく相談できる存在。そのため、介護職員との相性は非常に大切です。 - 看護職員
日中は常駐し、バイタルチェックなどの健康管理を行うとともに、服薬管理やケガの手当てなどの医療的ケアも行います。 - 生活相談員
入居者や家族から心身や介護サービスに関する相談を受け、施設や関係機関との連絡調整を担い、行政上の手続きも行います。 - 機能訓練指導員
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの資格を有する職員で、入居者の身体機能の維持や回復を目指したトレーニングをサポートします。日常生活で実践できるトレーニング法も教えてくれます。 - ケアマネジャー(介護支援専門員)
介護に関する高度な知識を有し、入居者の症状や希望に基づいたケアプランを作成します。 - 管理栄養士・栄養士
栄養に関する専門知識を有し、入居者の健康維持を目指した栄養バランスの整った食事のメニューを考案します。
上記のほか、法令による配置は義務づけられてはいませんが、施設によっては、入居を検討している段階で相談に応じてくれる「入居相談員」や、厨房で食事を作る「調理員」などが常駐しています。
介護付き有料老人ホームのメリット・デメリット
< 介護付き有料老人ホームのメリット >
- 介護サービス費用が定額
介護サービスには介護保険が適用され、要介護度に応じた介護保険費の自己負担額は毎月定額になっています。施設が定めた基準の範囲内であれば介護の回数が増えたとしても金額が増えることがないため、先を見通した資金計画が立てやすく、安心して利用できます。 - 24時間体制で介護を受けられる
施設内には24時間体制で介護スタッフが常駐しているため、夜中に体調が急変した際にもスムーズに対応してもらえます。 -
医療的ケアも受けられる
少なくとも日中は看護師が常駐しているため、健康管理や服薬管理のほか医療的なケアも行ってもらえて安心です。持病を持っている人でも入居できますが、どのような疾患であれば入居が可能かは施設によって異なるため、事前の確認が必要です。
また、認知症患者でも入居でき、適切なケアを受けることができます。ただ、施設によっては認知症の方に入居条件を定めていることもあるため、事前に確認しましょう。 -
介護度が上がっても住み続けられる
介護付き有料老人ホームは、介護保険を受けられる65歳以上の高齢者であれば、自立から要介護5まで幅広い身体状態の方が入居できます。また、介護専用型と混合型に関しては、入居中に要介護度が上がったとしても退去の必要がなく、住み慣れた施設で介護を受け続けることができます。 - 設備が充実している
施設内にはサークル活動やレクリエーションのための設備が備わっています。また施設によってはカラオケルームやゲストルーム、プールなど、健康増進を図るための娯楽設備が備わっていることもあり、充実した日々を過ごせます。 - 施設数が多く選択肢の幅が広い
介護付き有料老人ホームは民間施設のため、数も種類も豊富です。費用や好みに応じて選択できる施設の幅も広く、入居待ちが発生することもほとんどありません。
< 介護付き有料老人ホームのデメリット >
-
介護サービスを利用しなくても費用が発生する
介護サービス費は定額のため、サービスを利用しなくても介護度に応じた費用が月額利用料として請求されます。介護度が軽い方にとっては余分な費用がかかってしまうため、介護度の高い人の方がメリットは大きいと言えます。 - 入居費用が高額になる傾向にある
介護付き有料老人ホームは、特養やサービス付き高齢者向け住宅と比較すると費用が高額な施設が多く、入居一時金は数千万円にのぼることもあります。施設によって金額に差はありますが、将来的に支払い続けられるかどうかを考え、不安な場合は他の選択肢も検討した上で決めることをおすすめします。 - 施設のルールを守る必要がある
施設に入居しても外出や外泊はできますが、事前に施設への申し出が必要になったり、門限を守らなければならなかったりと、それぞれのルールを守る必要があります。自由気ままに過ごしたい、という人にとっては窮屈に感じるかもしれません。ただ、逆にいえばルールがあるからこそ入居者の安全や快適性が守られているため、安心して暮らしたいという人には良い施設と言えます。
介護付き有料老人ホームの選び方
介護付き有料老人ホームは民間施設のため数が多く、それぞれ特徴が異なります。どのような施設を選べば良いのでしょうか。ポイントを解説します。
- タイプで絞る
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介護付き有料老人ホームには、「介護専用型」「混合型」「入居時自立型」の3種類があります。まずはそれぞれの入居要件を確認し、どれに当てはまるか考えましょう。
- 費用で絞る
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次に、経済状況に見合った施設を探します。現在の貯蓄額や収入額から考えて入居一時金と月額利用料を無理なく支払えることが大切です。介護度の進行や収入の減少などで支払いが厳しくなるリスクも念頭に、余裕を持った資金計画を立てましょう。
- 立地や設備で絞る
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次に、資料請求と施設見学で立地や設備をチェックしましょう。入居者本人の生活の充実度はもちろんですが、家族が面会に通いやすい立地であることも大切です。居室の日当たりのよさや共有部分の清潔感も実際に目で見て確認を。また、スタッフの対応や入居者の表情などもチェックし、生活しやすい雰囲気かどうかを体感しておきましょう。
入居の流れ
入居申し込み
入居したい施設が決まったら、入居の申し込みを行います。
必要書類の提出
「健康診断書」や「診療情報提供書」などを提出します。健康診断書は取得に時間がかかる場合もあるので、余裕をもったスケジュールで進めましょう。
施設職員との面談
要介護者の場合は、ケアマネジャーの同席のもと、施設長などの管理者との面談があり、ここで健康状態や希望条件を確認します。
入居審査
面談の内容をもとに、要介護度や健康状態、経済状況を鑑みて入居が可能かどうかの審査が行われます。
契約・入居
契約関係の書類にサインし、契約を交わします。この時、入居者本人の印鑑証明や戸籍謄本、住民票のほか、連帯保証人・身元引受人の印鑑、印鑑証明も必要になります。
介護のプロが常駐していることが一番の魅力
介護付き有料老人ホームの魅力はやはり、24時間体制で介護サービスを受けられるところ。生活に不安を感じる人にとっては、非常に安心感のある快適な施設といえるでしょう。
充実したセカンドライフを送るためには、老人ホーム選びも非常に重要です。施設見学だけでなく、可能であれば体験入居をして雰囲気を体感することをおすすめします。
それでも「どこを選べばいいか分からない」という場合は、ケアマネジャーなどの専門家の意見も参考にすると良いでしょう。ぜひ、安心で快適な暮らしを送ることができる相性の良い施設を見つけてください。