デイサービス(通所介護)とは?特徴やメリット・デメリット、利用手続までを解説
要介護認定を受けると、次に検討しなければならないのが、どのような介護サービスを受けるかということ。介護度の軽いうちなら、施設に入所することなく自宅で生活しながら必要に応じて介護サービスを利用したいという方も多いでしょう。その選択肢の一つが「デイサービス」です。
デイサービスは、利用者が事業所に通って食事や入浴などの介護サービスを受けるというもの。外出していろんな人とコミュニケーションを取ることができるので、気持ちも上向きになるでしょう。
ここでは、デイサービスで提供される具体的なサービス内容や料金などについて詳しく解説します。
デイサービス(通所介護)とは
デイサービスは、介護保険が適用される介護サービスの一つ。老人ホームなどの施設に入所することなく、自宅で生活を続けながら日帰りで施設に通って介護サービスを受けられるもので、「通所介護」とも呼ばれています。利用できるのは要介護1〜5の認定を受けた方です。要支援1・2の方は原則として利用することができませんが、「予防通所介護」の指定を受けているデイサービスであれば自費で利用できます。
デイサービスの目的
デイサービスは、要介護者の生活の支援だけでなくQOL(生活の質)の向上も目的としています。また、在宅介護を行う家族など介護者の負担を軽減することも目的の一つです。
厚生労働省では、デイサービスについて「利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるように」行われるものとし、具体的な目的を次のように記しています。
- 自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消
- 心身機能の維持
- 家族の介護の負担軽減
デイサービスのサービス内容
デイサービスの提供時間
デイサービスを利用できる時間は施設によって異なりますが、一般的には9〜17時の間に提供され、この時間内であれば、利用者の希望に応じて利用時間を決めることができます。朝から夕方まで利用することもできれば、午前中のみや午後からといった短時間での利用も可能。また、希望によっては「食事のみ」「入浴のみ」というスポット利用もできます。
<デイサービスを一日利用した場合のスケジュール例>
8:30 自宅までお迎え
9:00 施設到着~ 検温など健康状態をチェック
10:00 入浴
11:30 機能訓練
12:00 昼食
13:30 レクリエーション
15:00 おやつ
15:30 レクリエーション
17:00 自宅までお送り
提供されるサービス内容
- 食事
利用時間に応じて、昼食やおやつ、夕食が提供され、他の利用者と共に食堂で食事をとります。また、施設によっては自宅用にお弁当を購入することもできます。加えて、低栄養状態やその恐れのある利用者は、通常のデイサービスに「栄養アセスメント加算」や「栄養改善加算」などを加算することで、管理栄養士と介護職員等の連携による栄養管理を行ってもらえます。 -
入浴
介護職員によって脱衣や体の洗浄、着衣などの介助を受けながら入浴できます。浴室は、大浴場や個室など施設によって異なりますが、「チェアー浴」「リフト浴」「ストレッチャー浴」といった特別仕様の浴槽が備わっていることが多く、要介護者であっても安心して浴槽に浸かることができます。 -
生活機能訓練
デイサービスでは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの資格を有する「機能訓練指導員」が1名以上常駐しており、利用者の心身状態に応じた機能訓練計画を作成し、ラジオ体操や歩行訓練、関節可動域訓練、マッサージなどの運動メニューを提供しています。医師の指導のもとで行われるリハビリとは異なり、体操やレクリエーションを通して、「歩く」「腕を上げる」といった日常的な基本動作の改善や維持を図る目的で行われます。 -
レクリエーション
利用者が気軽に参加して楽しめるゲームや体操のほか、絵手紙や書道などの創作活動や、カラオケ、映画鑑賞など、施設によってさまざまなレクリエーションが企画されています。介護度や障害の有無にかかわらず楽しめるものが多く、精神面でのリフレッシュになるだけでなく、機能訓練としても有効です。 - 送迎
施設に自分で通うことができない場合は、車での送迎を行ってもらえます。料金はあらかじめサービス料に含まれており、追加で費用が発生することはありません。逆に送迎サービスを利用しない場合は、往復100円程度の料金が割引きされます。ただし、送迎範囲は事業者が行政に届出をしている内容に準じるため、範囲外への送迎は行うことができません。一般的には、施設から車で片道30分ほどの距離までとされています。
デイサービスの利用料金
介護保険では、費用を「円」ではなく「単位」で表しています。デイサービスでは、滞在時間と介護度によって単位数が定められており、利用者は介護保険の適用によって原則として1割の自己負担で利用することができます(所得が多い方の場合は2〜3割負担)。ここには送迎やレクリエーションなどを含む基本的なサービスに対する料金も含まれていますが、食費や日用品の利用には別途料金が発生します。
<デイサービスの一回の単位数を料金換算した場合(自己負担額1割で計算)>
1回につき | 3時間以上 4時間未満 |
4時間以上 5時間未満 |
5時間以上 6時間未満 |
6時間以上 7時間未満 |
7時間以上 8時間未満 |
8時間以上 9時間未満 |
要介護1 | 368円 | 386円 | 567円 | 581円 | 655円 | 666円 |
要介護2 | 421円 | 442円 | 670円 | 686円 | 773円 | 787円 |
要介護3 | 477円 | 500円 | 773円 | 792円 | 896円 | 911円 |
要介護4 | 530円 | 557円 | 876円 | 897円 | 1,018円 | 1,036円 |
要介護5 | 585円 | 614円 | 979円 | 1,003円 | 1,142円 | 1,162円 |
サービス加算
上記の基本的な料金に加え、入浴介助や栄養改善など、特定のサービスの利用に対して料金が加算されます。加算される金額は施設によって異なるため、利用前に確認しておくことが大切です。
<加算料金の例>
※1単位あたり10円とした場合の利用料金の目安
口腔機能向上加算:200円/回
口腔機能の低下や、そのおそれがある利用者に対して口腔機能改善管理指導計画の作成や個人指導を行った場合に追加される料金
栄養改善加算:200円/回
低栄養状態の方やそのおそれがある利用者に対して栄養状態改善のための相談や管理を行った場合に追加される料金
入浴介助加算:400〜550円/日
入浴中の利用者の観察・介助を行った場合に追加される料金
食費や日用品の利用は全額自己負担
デイサービスでは昼食やおやつが提供されますが、これらの食費には介護保険が適用されず、全額自己負担となります。500〜1,000円/回を目安として考えておきましょう。また、おむつや歯ブラシなど、施設が用意している日用品を使用した場合にも規定の料金が請求されます。費用を抑えたい場合は私物を持参しましょう。
サービスを提供する人の職種
デイサービスでは、さまざまな職種のスタッフが協力しあって利用者にサービスを提供しています。職員の人員配置は提供サービスや運営体制によって異なりますが、基本的に次の5職種に関しては配置基準が定められています。また、生活相談員または介護職員のどちらかは常勤であることが義務付けられています。
職員 | 配置基準 | 役割 |
管理者 | 専従の常勤者1名(兼務可) | デイサービスの業務全般を管理する責任者 |
介護職員 | 専従で1名(利用者が15名を超える場合は、1人増えるごとに0.2を加えた介護職員を配置※1) | 食事、入浴介助、レクリエーションなど、利用者の介護全般を担う職員 |
看護職員 | 専従で1名以上 | バイタルチェックや服薬管理、急変時の対応など、利用者の健康管理を担う看護師または准看護師 |
機能訓練指導員 | 専従で1名以上 | 利用者のADL(生活能力)の評価、日常生活訓練や口腔体操、マシントレーニングなどを行う有資格者(作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、看護師、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師) |
生活相談員 | 専従で1名以上 | 利用者や家族からの相談対応、介護サービスの利用手続き、ケアマネージャーとの連絡調整などを行う職員 |
※1 例えば利用者の数が25名になった場合、15名を10名超えるので「(10×0.2)+1=3」となり、3名以上の人員配置が必要となります。
デイサービスのメリット・デメリット
メリット
・栄養バランスの良い食事を摂ることができる
デイサービスを提供する施設には管理栄養士が在籍していることが多く、栄養バランスの良い昼食やおやつを提供してくれます。高齢になると食事の回数や量がしっかり取れず、栄養が不足しがちになるため、デイサービスの食事は重要な栄養源となります。また、他の利用者と会話しながら楽しい食事時間を過ごすことで、精神面を支える役割も担っています。
・安心して入浴ができる
介護が必要になると、体を自分で洗うことが難しくなりますし、ましてや浴槽に浸かることは困難です。家族の手助けがあっても、大人を入浴させるのは重労働ですし、介護者が足を滑らせたり腰を痛めたりする危険もあります。しかしデイサービスであれば、専門知識を持つ介護職員の介助を受けられるため、安心して入浴できます。また、手すりや介護仕様の特殊な浴槽が備わっていることも多いため、介護度の高い方や車椅子利用者など、普段は浴槽に浸かることができない方でも湯船に浸かってゆったりとリラックスすることができます。
・人との交流で孤立感を解消できる
要介護状態になると外出の機会が減るため、家に引きこもりがちになり、人とのコミュニケーションが希薄なります。デイサービスを利用することで、食事やレクリエーション、機能訓練などの時間を通して利用者同士や職員とのコミュニケーションが生まれ、孤立感を解消することができます。
・家族の介護負担を減らせる
在宅介護の場合は、食事の準備や排泄・入浴の介助など、家族への心身の負担が大きいものです。デイサービスを利用することで家族は安心して利用者を任せることができ、家族が休息やリフレッシュをする時間を確保できます。
・機能訓練を受けられる
機能訓練指導員のサポートのもと、歩行訓練や関節可動域訓練などの運動を行い、「歩く」「座る」といった日常生活に必要な基本動作を行うための身体機能の維持・回復を図ることができます。一人ひとりの身体状態や希望に応じて訓練をサポートしてもらえるため、無理なく安全に運動できます。
また、レクリエーションの時間内でも軽い体操の時間が設けられることもあり、楽しみながら体を動かすことができます。
デメリット
・費用負担がある
デイサービスには介護保険が適用される費用もありますが、要介護度や利用回数、利用する施設や加算するサービスなどに応じて料金は高くなるため、それが家計の負担になる場合もあります。
・ストレスを感じる場合がある
施設の職員や他の利用者との相性が合わない場合には、デイサービスが本人のストレスになることがあります。事前に施設見学やスタッフとの面談を行い、雰囲気を見ておくことをおすすめします。
デイサービスの利用に適しているケース
デイサービスのメリット・デメリットをふまえ、どのようなケースでデイサービスが適しているかを考えてみましょう。
一人で日常生活を送ることが難しくなってきたケース
要介護状態にある高齢者は、「食事を自分で作れない」「お風呂に一人で入るのが難しい」といった日常生活の悩みを抱えることが多いもの。その結果、栄養状態が悪くなったり清潔な状態を保てなくなったりして、心身状態があっという間に悪化してしまうリスクがあります。
デイサービスでは、栄養のある食事が提供されるため、毎日ではなくてもバランスの整った食事を摂ることができ、健康を維持しやすくなります。また、職員に介助してもらいながらしっかりと入浴できることで、清潔を保つこともできます。
家に引きこもりがちなケース
体が思うように動かなくなると一人で外出することが難しくなるため、どうしても家の中に引きこもりがちになり、気持ちはふさぎ込み、身体機能も衰えていきます。
デイサービスなら送迎車で事業所まで連れて行ってもらえますし、事業所内では職員や他の利用者とのコミュニケーションも取ることができます。また、機能訓練を行うことで身体機能の維持も図ることができ、心身ともに良い影響が期待できます。
家族にリフレッシュが必要なケース
家族が在宅介護をしている場合、家族の心身にも負担がかかります。毎日続けば、家族も疲れてしまうため、時々は休息も必要です。デイサービスを利用することで、介護者の負担軽減ができ、リフレッシュにも繋がります。本人と家族が双方でストレスを軽減し、関係性を悪化させないためにも、時には離れる時間が必要です。
デイサービスの種類
一般的なデイサービスのほか、リハビリに特化しているタイプ、入浴に特化しているタイプ、宿泊が可能なタイプなど、さまざまな種類があります。
ここでは、「お泊まりデイサービス」「特化型」「認知症対応」の3種類のデイサービスについてご紹介します。
リハビリ特化型
リハビリ特化型デイサービスは、入浴や食事などの日常的なサービスの提供がなく、機能訓練に特化しているデイサービスです。一般的なデイサービスよりトレーニングマシンが充実しており、しっかりとトレーニングを行えることが特徴です。「食事や入浴は必要ないけれど、機能訓練はしっかり受けたい」という方におすすめ。短時間で集中してサービスを利用でき、費用を抑えることができます。
ただし、「リハビリ特化」とはいえ、医師の配置は義務付けられていないため、医師のサポートが必要な方には適していません。介護度の高い方より、身体機能の維持や回復を目指したい方に向いていると言えるでしょう。
お泊まりデイサービス
昼間は通常のデイサービスを受け、そのまま施設に宿泊できるデイサービスです。慣れ親しんだ施設やスタッフのもとで宿泊できるため、利用者も家族も安心できる点が大きなメリット。一泊することで、家族の介護負担もより軽減されます。
ただし、介護保険が適用されないため、利用料は全額自己負担となります。また、施設によっては個室ではなくパーテーションなどで仕切られた大部屋での宿泊となり、プライバシーの確保が十分ではない可能性もあります。個室で宿泊したい場合は、「ショートステイ(短期入所)」という別の介護サービスを選ぶという選択肢もあります。この場合は介護保険が適用されます。
認知症対応型
認知症対応型は、認知症の方を専門に受け入れているデイサービスで、「認知症デイサービス」とも呼ばれています。利用者の定員が12名以下の少人数制で、認知症についての理解が深い職員による専門的な認知症ケアを受けることができます。
認知症対応型デイサービスの対象者
- 医師により認知症と診断された方
- 要介護1〜5(要支援1・2の方でも、認知症の症状があることが明らかな場合は利用可能)
- 認知症対応型デイサービスを提供する事業所のある市町村に住んでいる方
デイサービスの利用の流れ
デイサービスを利用するには、一定の流れにそった契約が必要です。利用までの流れを解説します。
- ケアプランの作成
-
要介護認定を受けたら、市区町村の介護保険課や地域包括支援センターに相談し、担当のケアマネジャーを紹介してもらいます。ケアマネジャーは、利用者の生活の様子などを確認し、利用者と家族の希望をもとに、最適なケアプランを作成します。「デイサービスを利用したい」という希望もこの時にしっかり伝えておきましょう。
- 事業所の選定
-
ケアプランの内容をふまえた上で、デイサービスを受ける事業所を選定します。料金のもととなる単位数やサービスの充実度は事業所によって異なります。契約前に資料請求や見学などを行い、事業所の雰囲気をチェックしておきましょう。ケアマネジャーは地域の事業所の情報に詳しいので、希望する事業所について質問すると良いでしょう。
- 契約
-
事業所とのデイサービスの利用契約を行います。
- デイサービスを受ける
-
送迎車で事業所の職員が自宅まで迎えに来てくれます。
デイサービスとデイケアの違い
デイサービスに似た介護サービスの一つに「デイケア」というものがあります。デイサービスが「通所介護」であるのに対し、デイケアは「通所リハビリテーション」であり、デイサービスの内容に加えて、医療的ケアやリハビリによる身体機能の回復・維持に重きが置かれている点が特徴です。心身のケアや日常生活の自立支援を行なってもらいたい場合は、デイサービスではなくデイケアを選ぶと良いでしょう。
デイサービスとデイケアの違い
デイサービス (通所介護) |
デイケア (通所リハビリテーション) |
|
対象者 | 要介護の認定を受けている方 | 要支援か要介護の認定を受けている方 |
目的 | 1 ) 他者との交流 2 ) 心身機能の維持 3 ) 家族の身体的・精神的負担の軽減 |
1 ) 心身機能の維持 ・回復 |
人員体制 | 介護士 看護師 機能訓練指導員 |
介護士 看護師 リハビリ専門職 医師 |
サービス利用の前に選択肢の検討を
介護保険サービスでは、デイサービス以外にもさまざまなサービスが展開されています。また、デイサービスの事業所だけでなく、小規模多機能型居宅介護や住宅型有料老人ホームや高齢者向けサービス付き住宅でもデイサービスを利用できる場合があります。利用条件や料金、宿泊の有無などを総合的にふまえた上で、適したサービスを選択するとよいでしょう。ケアマネジャーなどの専門家に相談しながら、施設見学も行い、ベストなサービスを選択してください。