「生前整理」で身の回りのものを整理。
そのメリットと具体的な方法
生きているうちに身の回りのものや財産を整理することを「生前整理」と言います。長年、財産や持ち物を管理しているうちに、自分にしか置き場所が分からなくなってしまったり、管理するための暗証番号やパスワードが増えてしまったりと、複雑で込み入った状態になりがちです。しかしそのまま放っておくと、自分自身が亡き後、それらを整理・処分する役割を残された家族が負わなくてはなりません。生前中に、できるだけ身の回りをすっきりと整理しておくことで家族の負担が軽減され、また自分自身も快適なセカンドライフを送ることができるでしょう。
今回は特に、生前整理の中でも身の回りのものを仕分けし、整理する方法を中心にご紹介します。
生前整理とは
生前中に、財産を含む身の回りのものを整理し、不要なものを処分することを、「生前整理」と言います。通常は人生の終わりを見据えて行うものですが、特に身の回りのものの整理については「断捨離」という言葉が流行したように、20代、30代の若い世代にも浸透しています。それだけ、生前整理は行う意味があるものだと言えるでしょう。
生前整理を行うメリット
- 大切なものを適切に管理できる
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契約書や保険証券、貴重品など、大事なものとそうではないものが混在していて、いざというときにもどこに置いたか思い出せない、というのはよくあることです。身の回りのものをあらためて整理し、不要なものを処分し、大切なものは適切な場所に保管しておくことで、急に必要となった場合でもスムーズに取り出すことができます。
- 遺族の負担が減る
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葬儀が終わったと思ったら次は遺品整理、と残された家族にはやるべき仕事がたくさんあります。特に家の中の片付けとなると、時間がかかるだけでなく、家具や家電など処分にお金がかかるものもたくさんあります。また、どれを残しどれを処分するかの判断を一つひとつのものに対して行うのもひと苦労ですし、価値が分かりにくい美術品や趣味のものは判断自体が非常に難しくなります。あらかじめ自分自身で処分できるものは処分しておき、残しておくものに関しては自分の亡き後、どのように処分するかの意思表示を行っておくことで家族の負担が大きく軽減されます。
- 遺産相続のトラブル防止につながる
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亡くなった後に思わぬ財産が出てくると、相続人の間で誰がその財産を受け継ぐのか、揉める原因になります。生前のうちに財産がどれくらいあるかを明確にして財産目録を作成しておくことで、遺産分割協議がスムーズになります。加えて、あらかじめどの財産を誰に相続させたいのか、遺言書に記しておけば相続人間のトラブルの防止にもつながります。
- 税金対策ができる
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所有する財産が明確になることで、生前贈与や相続を行なった際に発生する贈与税や相続税を算出できます。家族の納税の負担が重くならないように、事前に節税対策を打っておくこともできます。
- 気持ちが整理される
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身の回りのものを整理している途中に思い出のものを見つけて、そのときの出来事に思いを馳せてしまうことはよくあります。自らの人生を振り返る中で、自分はこれからどのように生きていきたいのかをあらためて考える機会になり、新たな気持ちで次への一歩を踏み出すことができるのではないでしょうか。
生前整理を進めるためのステップ
不要品を処分する
まずは「必要なもの」「不要なもの」に仕分けしましょう。多少の思い入れがあっても、長年使用していないものは思い切って捨てる勇気も必要です。ただし、「これだけは残しておきたい」というものもあるはず。そういうものは大切にとっておくか、判断を先延ばしにしてもよいでしょう。写真に収めるなどしてデジタルで管理するという方法もあります。
また、判断に迷ってしまう人は、あらかじめ「どのくらいの量まで」「どのくらいの大きさまで」と、自分なりに残すものの線引きをしておくとスムーズです。
貴重品を適切に保管する
通帳や印鑑、契約書やデジタル資産、貴金属などの貴重品は、適切な場所に保管します。防犯面を考えると見つけやすい場所に置くのは危険ですが、いざというときに家族も見つけられないようでは困ります。見つけにくい場所に保管するのであれば、家族にはその場所を伝えるかエンディングノートに記載するなど、自分がいなくても家族が確実に見つけられるように対策をしておきましょう。
財産目録を作成する
通帳などの金融資産のほか、不動産や車、貴金属など、所有する財産の種類や保管場所、金額などを記載しておきます。この時、どの財産を誰に相続させたいかを決めておきましょう。同時に、借金などマイナスの財産も相続の対象となるため、認識しておく必要があります。
デジタル整理
クレジットカードやインターネットバンキング、ネット証券などの暗証番号やパスワードに加え、SNSのアカウントやパソコンやスマホのパスワードなど、デジタル情報の整理も大事です。不必要なものは削除したり集約したりしてできるだけ数を減らし、IDやパスワードはエンディングノートなどに記載しておきましょう。定期契約をしているサービスについても、いつまでも利用料金が引き落とされることのないよう、不要なものは解約しておき、残りの契約についても家族がスムーズに解約できる状態にしておきましょう。
不要品回収・買取に出す
大きな家具や不要品の量が多い場合は、不用品回収業者に回収を依頼することもできますが、家具やブランド品、家電など価値のあるもの、状態の良いものは買取業者に買い取ってもらったり、フリマアプリなどで販売することもできます。記念切手や記念硬貨、古本、サイン本などはプレミアがついて思わぬ高額で売れるかもしれません。
片付け業者に依頼する場合
大きな家具の解体や処分は、体が元気なうちであっても大変な仕事です。家族だけで処理するのは難しいと感じたら、片付け業者に依頼するのも一つの方法です。最近では、インターネット経由で気軽に依頼できます。
ただし、他人を家の中に入れることになるので、金額だけでなく信頼できる人かどうかを見極めることも非常に大切です。価格はもちろん大切ですが、口コミで悪い評価が多くないか、その業者の住所や電話番号が正しいかどうかなども確認しましょう。通常は事前に現場に下見に訪れるので、この時に人柄を見極めることもできますし、そもそも下見に訪れない業者は避けた方が良いかもしれません。
また、安ければ良いというものではありませんが、不当に高額な料金を取られないためにも、複数の業者に連絡して相見積もりをとることをお勧めします。
思い出がたくさん詰まった品はどう整理する?
写真やビデオなど思い出が詰まった品の中には処分したくないものもあると思います。ただ、そのまま残していると、最後には家族がそれを処分することになり、その際には罪悪感も感じさせてしまいます。そこでおすすめなのがデジタル化です。ものとしては残りませんが、データとして残すことで経年劣化がなく、保管スペースを取ることもありません。コピーして家族で共有できるのも良い点です。
デジタル化する方法
デジタル化するには、自分で行う方法と業者に依頼する方法とがあります。写真の場合はスキャン、ビデオテープの場合はビデオデッキとパソコンを繋いでデータ化することになりますが、これを自分自身で行うにはかなりの時間がかかりますし、専用のソフトなども必要になります。趣味で行うのでなければ、業者に依頼した方が簡単です。
デジタル化したい写真やビデオを選別する
デジタル化すればかさばらないとはいえ、写真やビデオを大量に保有している場合、その全てをデジタル化すると膨大な量になります。業者に依頼するとしても料金が高くなるので、ある程度の選別は必要です。
写真選びのポイントとしては、家族や友人、ペットと一緒に写っている写真や結婚式などの記念日の写真は残しておくといった自分なりの基準を作っておくことです。
デジタル化したデータの保管方法
DVDなどで保管する方法もありますが、せっかくデジタル化したのですから、オンラインのストレージサービスを利用してスマートに管理してはいかがでしょうか。
「Googleフォト」や「Amazon Photos」など、月額料金を支払うことで大容量で利用できるサービスがたくさんあります。お好みのものを選び、いつでもどこからでも思い出にアクセスできるようにしましょう。
本当に大切な写真はそのまま保管を
記念日に写真館で撮影したアルバムなどは、それそのものに大きな価値があるはず。デジタル化しても良いのですが、フォトブックにまとめるなどしてそのまま保管しておいてもよいでしょう。
身の回りの整理は、思い立ったタイミングで
生前整理はいつから始めれば良いのでしょうか。定年退職や子どもの独立を機に生前整理を行う人が多いと言われていますが、身の回りの整理に関しては何歳になったら始めるというものではなく、20代や30代の若いうちから始める人もいます。家財の処分や貴重品の仕分けなどは、ある程度の体力や気力が必要です。元気なうちに、思い立ったら行動すると良いでしょう。