終活を行う上で欠かせないのが「エンディングノート」の作成です。終活では、万が一の事態に備えて、家族がスムーズにさまざまな手続きを行えるように医療や介護、預金などの情報や、葬儀・お墓に関する希望などを明確にしておくことが重要になります。エンディングノートはそうした情報を書き留めておくもの。一冊のノートにまとめることで、自分にも家族にも見やすくなります。終活を始めたいと思いついたとき、まずは手軽にできるエンディングノートの作成から始めるのも良いでしょう。
では、エンディングノートには具体的に何を、どのように記載すれば良いのでしょうか。また、記載後はどこに保管しておけば良いのでしょうか。ここでは、エンディングノートの作成方法と保管方法についてご紹介します。
エンディングノートを作成する意義
エンディングノートは、遺言書とは異なり法的な効力はありません。しかし、書き記しておくことで、口頭では伝えきれなかった大切な情報や、万が一の場合の希望を家族に明確に伝えることができます。また情報だけでなく、これまでどのような人生を歩んできたのか、どのような考えを持っているのかを書き残すことで、ご自身の生きた証を後世に残すことにもなります。
頭の中にあるものを文章化することで考えも整理されていき、終活で身の回りのものを整理する時に何を残し何を手放せば良いのかか明確になるかもしれません。さらに、自分自身に向き合う中で、今まで意識してこなかった気持ちに改めて気づくことができ、この先の生きがいややりたいことを見つけるきっかけになることもあります。 このように、エンディングノートの作成にはたくさんのメリットがあるのです。
エンディングノートに書く内容
- 自分のこと
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重要な個人情報を書き留めます。健康保険証は、本人の死後、自治体へ返却しなければならないため、保管場所を必ず記載するようにしましょう。
また、これまでの人生の歩みや趣味についても、写真などを交えて書き留めておくと良いでしょう。今後の生き方のヒントも見えてくるはずです。- 記載する内容例
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- 本籍や生年月日などの基本的な情報
- 健康保険証、年金手帳、保険証券、パスポート、マイナンバーカードなどの重要な情報と保管場所
- 生い立ちや現在に至るまでの歴史や趣味のことなどの自分史
- 交友関係
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親戚や友人、仕事の関係者など、万が一のときに連絡してほしい人の連絡先を記載します。
- 遺品に関すること
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遺品の中から、家族や親戚、友人などに遺したいものとその保管場所の情報を記載します。ただし先述したように、エンディングノートには法的な効力はないため、遺産の分配については別途遺言書を作成する必要があります。
また逆に、処分してほしいものも記載しておきます。ゴミとして焼却処分してもよいのか、売却処分するのかといった処分方法も記載すると良いでしょう。- 記載する内容例
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- 譲りたい相手と品物
- 処分したいものと処分方法
- 資産に関すること
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資産に関する情報は、家族が手続きをスムーズに進める上で非常に大切です。分かりやすく書き記すようにしましょう。一般的にエンディングノートは手書きで作成することが多いものですが、アカウントやパスワードなどの英数文字や記号の場合、手書きでは大文字と小文字の区別がつきにくいといった問題があります。エンディングノート自体が手書きであっても、デジタル情報はデータ入力して印刷したものを貼り付けるなど、読みやすくする工夫が必要です。
- 葬儀やお墓に関すること
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価値観が多様化している今、葬儀やお墓には多種多様な形式があります。家族が迷わなくても良いように、ご自身の希望をエンディングノートに明確に記載しておきましょう。
- 記載する内容例
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- 葬儀の形式と予算
- 喪主をお願いしたい人
- 希望する埋葬方法や墓地
- 医療や介護のこと
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エンディングノートは死後のことだけではなく、重い病気にかかった時や自身の判断能力が低下した時にも使われるものです。延命治療を受けたいのか受けたくないのか、また介護を受けるならどのような施設に入居したいか、希望する介護方針などの情報も併せて記載しておきましょう。
- 記載する内容例
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- かかりつけの医者
- 延命措置や終末期医療に関する希望
- 介護施設に関する希望
- デジタル情報
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パソコンやスマートフォンに重要なデータがあっても、ロックをしていると本人しか見ることができません。死後にデータを共有したい場合はアカウントやパスワード、メールアドレスやパスワードなど、デジタル情報を記載しておきます。誰にも知られたくない場合は、初期化のためのパスワードを記載しておきましょう。最近では、死後に自動的に初期化されるソフトもあります。
- メッセージ
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家族や友人に対する感謝の気持ちなど、伝えたいメッセージを記しておきましょう。自分自身に素直に向き合い、心の内を表現する時間を楽しんでください。
エンディングノートを書くコツ
エンディングノートは後から書き直したり追記することができます。また、決まった形式もありません。あまりかしこまらず、まずは気軽に書き始めて見ましょう。また、多くの情報を書き留めることになるので、完成までには時間がかかるものです。無理のない範囲で少しずつ書いていくと良いでしょう。
書く内容は上に記した通りですが、これはあくまで一例。持っている情報や想いは一人ひとり異なるはずなので、自分自身が何を遺せばよいか、考えながら書き記しましょう。家族や友人のことを思い出しながら書き進めると、書くべき内容が自ずと見えてくるのではないでしょうか。
エンディングノートの保管場所
エンディングノートには重要な個人情報も含まれるため、盗難に遭わない場所に保管することが非常に大切です。かといって、分かりづらい場所に保管すると、家族さえも見つけられなくなり、せっかく書いた意味がなくなってしまいます。
- 盗難に遭わない場所
- いざという時に家族が見つけやすい場所
この相反する条件を持つ場所を見つけるのは少々難しいかもしれません。家族だけには、事前にノートの場所を伝えておくことをおすすめします。
貸金庫などは紛失や盗難のリスクを減らすことができますが、そもそも開けるために鍵やパスワードが必要になるため、エンディングノートの保管場所としてはおすすめできません。また、書き直したり追記したい時に手元にないのは不便です。ご自身が簡単に出し入れできて、ご家族も見つけやすい場所を選びましょう。
エンディングノートを、重要な個人情報を含むノートと、家族へのメッセージなど見られても損害が発生しない情報を書いたノートとに分け、それぞれ別に保管しておくという方法もあります。
まとめ
死後しばらくたってから、遺品整理をしている途中にエンディングノートが見つかるという話はよくあります。しかしこれでは、ご自身の意思が葬儀やお墓に反映されませんし、ご家族にも「想いを叶えてあげられなかった」という後悔が残るでしょう。エンディングノートの作成が終わったら、ご家族にノートの存在を知らせておきましょう。
また、ノートに書くだけでなく、医療や介護、お葬式やお墓のことはできるだけ元気なうちに家族に相談しておくことが望ましいです。なぜそうしたいのか、という理由も伝えておくことで、ご家族も納得しやすくなります。エンディングノートはご自身のためだけでなく、ご家族のために書くものでもあることを忘れないようにしましょう。