いきいきとしたセカンドライフを過ごすためには、人生の終わりを見つめ、その準備を整えておく「終活」が非常に大切です。医療や介護、相続、保険、お墓や葬儀など、「私の死後、これらの手続きはどうなるの?」と心配になっていることを洗い出し、準備をしておくことで不安が解消され、次への一歩を踏み出すことができるのです。
では、具体的に何をすれば良いのでしょうか?医療や介護、相続や保険と、どれも難しそうな印象を受けるかもしれませんが、大事なのは、これからの人生と死後を見つめ「自分はどうしたいか」を考えること。難しい部分は専門家の手を借りることもできるので、まずは終活への第一歩を踏み出してみましょう。このページでは、終活でやるべきことを9つの項目に分け、それぞれについてご説明します。
終活でやるべきこと9選
- 身の回りの物の整理
-
衣類や本、食器など、生きていれば所有物は増えていくものです。しかし、物が多ければ多いほど、亡くなった後の「遺品整理」は家族の負担として重くのしかかります。「故人が大事にしていたものだから、捨てない方がいいだろうか」と悩みながら片付けることになり、非常に時間のかかる作業になるでしょう。遺品整理の業者に依頼する方も増えていますが、それでも「必要な物」「不要な物」を判断するのは簡単ではありません。ある程度、ご自身で物を整理しておくことが大切です。
- 断捨離をする
-
ご自身の体力があるうちに、できるかぎり持ち物を減らしておきましょう。使わなくなった衣類や本などは、チャリティ団体に寄付するのも良いですね。また、残しておく物についても、亡くなった後の処分方法について家族が分かるように書き留めておくことで遺品整理の負担を減らすことができます。
- デジタル終活も忘れずに
-
整理が必要なのは、実体のある物に限った話ではありません。パソコンやタブレット、スマートフォンにも大切なデータが記録されているはず。例えば、写真や動画、SNSのアカウント情報、インターネットバンキングに登録した暗証番号やネット決済時のクレジットカード情報、定期購買しているサービスの情報など。これらを整理する「デジタル終活」も非常に重要です。
情報はできるだけ集約、不要なサービスは解約し、データの保存場所を家族に伝えておきましょう。人に見られたくないデータは処分しておくことをおすすめします。最近では、死後にデータが自動で削除されるソフトやアプリも公開されています。必要に応じて活用すると良いでしょう。
- 財産の管理
-
本人が亡くなった後、家族が一番困るのが「印鑑や通帳が見つからない」「銀行の暗証番号が分からない」といったお金に関する問題です。家族が財産を引き出したり解約したりと、手続きを行うことになりますが、情報がないと手続きが非常に煩雑になります。下記の保管場所や情報を明確に伝えておきましょう。
- 印鑑
- 通帳
- クレジットカード
- キャッシュカードやインターネットバンキングの暗証番号
- 加入している保険
- 有価証券に関する情報
- 借金や貸付金の有無と金額
- 医療や介護の希望を決める
-
重い病気にかかった際に病名告知や余命宣告、延命治療を受けるかどうかという希望やその際の費用など、終末医療に関する希望を記しておきます。介護も同様に、どのような介護を受けたいのか、希望する施設などを含めて記しておくと良いでしょう。本人の意思が明確であれば、万が一大きな病気が見つかった際や介護が必要になった際にも家族が対応方法を判断しやすくなります。家族も関わることなので、一人で決めてしまわず、元気な間に家族とよく話し合っておくことをおすすめします。
- 相続の準備
-
遺産相続のトラブルが一度起きると、仲の良い家族でも遺恨を残すことがあります。遺言書を作成し、財産の相続に関する取り決めを明確にしておきましょう。
遺言書は何度でも書き直すことができますが、一般的に使われているのは下記の3種類です。- 自筆証書遺言
-
本人が自筆のみで記載した遺言書で、財産目録以外の部分にワープロやパソコンを使用することはできません。日付の記載や押印、署名など、民法による規定に則って作成することで法的な効力をもちますが、第三者から書き換えられるリスクがあるため、保管には注意が必要です。
- 公正証書遺言
-
口頭で述べた内容を「公証人」が書類に記載し、作成する遺言書です。公証人とは、公的な証明書を作成する権限を持つ公務員のこと。作成時には2人の証人の立ち会いが義務付けられており、記載後は間違いがないかを読み上げて遺言者と証人が確認します。費用はかかりますが、正確で有効な遺言書を作成することができます。
- 秘密証書遺言
-
署名捺印した遺言書を封筒に入れ、封印したものを公証人に提出します。公証人と2人以上の証人の立ち会いのもと、遺言者の氏名や住所を確認し、公証人が署名捺印したものに遺言者と承認が署名捺印します。作成はワープロやパソコンでも可能です。
- 葬儀の希望を決める
-
自身の葬儀に手間やお金をかけてほしくない、と考える人が増えています。希望する葬儀の形式や予算を決め、あらかじめ予算を確保しておくことでこうした心配はなくなります。加えて、参列者リストや使いたい遺影写真などの希望も記しておくとよいでしょう
- 生前に葬儀を契約することもできる
-
予算や希望の形式に合わせて事前にプランを立てておくと、亡くなった後の手続きがいっそうスムーズになります。ただし、後々トラブルにならないために、解約時の違約金や年会費の有無、プラン変更などが可能かどうかを事前にしっかりと確認しておきましょう。
- 生前葬という選択肢
-
生きている間に「生前葬」を行うという選択肢もあります。生前葬を行った際は、亡くなった後の葬儀は行わず、納棺と火葬だけで済ませることができます。また、葬儀の内容を自身で自由に決めることができるため、参列者に楽しんでもらう演出を考えたり、お世話になった人に感謝の気持ちを伝えたりできるというメリットがあります。
- お墓の希望を決める
-
どのようなお墓を希望するのか、埋葬方法や予算を決めておきましょう。家族に負担をかけたくないという想いから、先祖代々続くお墓を「墓じまい」して、自身は「自然葬」や「納骨堂」など、管理しやすい形式のお墓を希望する方も増えています。墓地には、主に下記のような運営形態があります。
- 公営墓地
-
地方自治体が主体となって管理・運営する墓地です。管理費や使用料が比較的安い場合が多く、倒産や閉鎖のリスクがほぼないため将来的に安心して利用できる点がメリット。居住する地域の自治体に申し込みをして利用しますが、人気が高いため抽選が行われます。
- 民営墓地
-
宗教団体や財団、社団法人が経営母体となり、民間の企業が運営を行う墓地で、宗派を問わずいつでも申し込みができます。予算や希望に合わせて自由な区画やデザインを選択できる点がメリットです。
- 寺院墓地
-
寺院が運営している墓地で、お寺の檀家が利用できます。お墓の管理や供養、法要を全てお寺に任せることができる点がメリットです。
- 永代供養墓
-
霊園や墓地の管理者が永続的に管理をしてくれる墓地です。子や孫がお墓を承継する必要がなく、最初に永代供養料を支払えばそれ以降の管理費等は基本的に発生しません。
- やりたいことを計画する
-
終活は、セカンドライフを前向きに生きるための活動です。充実した時間を過ごすために、行きたい場所や新たに挑戦したいこと、またはセカンドライフをどのように過ごしたいかなどを考えて計画を立てましょう。旅行や趣味や習い事、地域のイベントやボランティアなど、現役時代にはできなかったことに挑戦でき、人生の可能性もまだまだ広がっていきます。
- 老後の資金計画を立てる
-
やりたいことがあっても、生活費の心配があるとなかなか没頭できません。7で洗い出した内容をもとに、今後の生活に必要な資金をどのように確保するのか、資金計画を立てておきましょう。住まいについても考えておく必要があります。医療や介護を受ける際にも、自宅に住み続けるのか、施設に入所するのか、どのような施設を希望するのか、予算をふまえて希望を明確にしておきます。自宅での暮らしを希望する場合でも、住宅ローンや今後のメンテナンスにかかる予算を確保しておくことも重要です。
- エンディングノートの作成
-
家族に伝えておきたい情報や希望を一冊の「エンディングノート」にまとめることをおすすめします。このノートさえあれば、家族がスムーズに手続きを進めることができます。もちろん、記載方法や内容は自由なので、家族に伝えたいメッセージやご自身の思いなどを記すこともできます。写真などを貼っても良いでしょう。
- エンディングノートの内容例
-
下記は、エンディングノートに記す代表的な項目です。これ以外にも、伝えたいことを自由に記入できます。
- 生い立ちから現在に至るまでの自分史
- 年金手帳やマイナンバーカードなどの個人情報の保管場所
- 万が一の際に連絡してほしい家族や知人の連絡先
- かかりつけの病院や服用している薬などの医療情報
- 加入している保険や契約プラン、保険金受取人などの保険情報
- 預貯金や不動産、有価証券などの財産情報
- 利用したい施設や希望する介護方法などの介護の希望
- 希望する葬儀の形式や予算、喪主など、葬儀に関する希望
- 遺品整理の方法
- スマートフォンやパソコンで利用しているIDやパスワードなどのデジタル情報
- 家族や友人に伝えたいメッセージ
終活を楽しみましょう
家族の負担を減らすという意味で効果的な終活ですが、一番の目的は、自分自身のセカンドライフをいきいきと過ごすために準備をすること。将来への不安をなくし、これからの人生を思いきり楽しむための準備ですから、終活自体もぜひ楽しみながら取り組んでください。自分自身の希望と向き合う中で、将来をより良く生きるための新しいヒントが見つかるかもしれません。