生前贈与は、相続を待つことなく、生きているうちに財産を贈与する方法です。相続税の節税や、財産をスムーズに承継できるといったメリットがある一方で、贈与税がかかるなど、デメリットも存在します。こちらの項では、生前贈与のメリット・デメリットについてご説明します。
生前贈与のメリット
生前贈与のメリットには次のような事が挙げられます。
■相続税の節税効果:生前贈与によって相続財産を減らすことで、相続税を軽減することができます。特に暦年贈与の非課税枠を活用すれば、一定額までは贈与税がかかりません
■遺産分割の円滑化:生前贈与をしておくことで、相続開始後の遺産分割で争いが起こる可能性が減らすことができます
■財産を確実に渡せる:相続は、被相続人が亡くなってから行われるため、贈与のように確実に財産を渡せるとは限りません。生前贈与であれば、贈与したい人に確実に財産を渡すことができます
■贈与する時期を自由に決められる:相続は、被相続人が亡くなった時点で発生しますが、生前贈与であれば贈与する時期を自由にきめることができます
「暦年贈与の非課税枠」とは何ですか?
前項に出てきた「暦年贈与の非課税枠」についてご説明します。
簡単に言うと、1年間(暦年)に贈与を受けた財産が110万円までであれば、贈与税がかからないという制度のことです。
■暦年贈与の非課税枠の仕組み
・1人110万円が基本:1年の間に、あなたがお子さんや配偶者など、誰からどれだけのお金を贈与されたとしても、贈与された人(受贈者)1人あたり年間110万円までは贈与税がかかりません
・複数人に贈与してもOK:配偶者、子ども、孫など、複数の人に贈与する場合も、それぞれに110万円の非課税枠が適用されます。つまり、贈与の相手が増えれば、それだけ多くの金額を贈与できる可能性が広がります
■暦年贈与のメリット
・相続税の節税:生前に財産を贈与することで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができます
・手続きが比較的簡単:贈与税の申告が必要ない場合もあり、手続きが比較的簡単です
・財産を確実に渡せる:相続は、被相続人が亡くなってから行われるため、贈与のように確実に財産を渡せるとは限らない場合があります。生前贈与であれば、贈与したい人に確実に渡せる可能性が増えるでしょう
■暦年贈与の注意点
・3年ルール:相続開始前の3年以内に贈与された財産は、相続税の対象となる可能性があります
・贈与契約書の作成:贈与の証拠として、贈与契約書を作成しておくことをおすすめします
・税理士への相談:贈与税は複雑な税金です。贈与を行う際は、必ず税理士に相談しましょう
生前贈与のデメリット
では、生前贈与のデメリットはどのようなことが挙げられるでしょうか。
■贈与税がかかる:生前贈与には、贈与税がかかります。暦年贈与の非課税枠を超える分については、贈与税を納める必要があります
■手続きが煩雑:生前贈与には、贈与契約書の作成や税務申告など、様々な手続きが必要になります
■贈与した財産の運用リスク:贈与した財産が、贈与を受けた人の手に渡った後、その価値が下がる可能性があります
■相続開始から3年以内の贈与は相続税の対象となる:相続開始から3年以内に贈与された財産は、相続財産として扱われ、相続税の対象となります
生前贈与を行う際の注意点
今まで生前贈与のメリット・デメリットを紹介してきましたが、注意点もあります。
■贈与税の計算:贈与税の計算は複雑なため、税理士に相談することをおすすめします
■贈与契約書の作成:贈与契約書を作成することで、トラブルを防ぐことができます
■贈与する財産の選定:贈与する財産は、贈与の目的や贈与を受ける人の状況に合わせて慎重に選ぶ必要があります
■相続人への配慮:生前贈与を行う際は、他の相続人への配慮も必要です
※生前贈与は誰にでもおすすめできるわけではありません
生前贈与を行うかどうかは、ご自身の財産状況や家族構成、相続に対する考え方などを総合的に考慮して決める必要があります
まとめ
生前贈与は、相続税の節税や財産をスムーズに承継できるといったメリットがある一方で、贈与税がかかるなどのデメリットも存在します。生前贈与を行う際は、メリットとデメリットを比較検討し、税理士などの専門家に相談しながら慎重に進めることが重要です。