終活において、同一性保持権は自身の「死後」どのように扱われたいかを考える上で重要な権利となります。
同一性保持権は、著作権法で定められた著作権人格権の一つであり、著作者が自分の著作物及びその題号について、著作者の意に反して変更、切除その他の改変を禁止できる権利のことを指します。
つまり、自分が作成した作品や自分の名前を、死後であっても自分の意思に反して変えられたくないという権利です。
こちらの項では、終活における「同一性保持権」についてご説明いたします。
終活における「同一性保持権」の重要性
終活において、同一性保持権が重要となる理由は主に以下の3つが挙げられます。
1.作品や名前に対する想いを守る
人は誰しも、自分が生み出した作品や、自らの名前には深い愛着を持っています。
特に、一生をかけて心血を注いだ作品や、家族や友人から親しまれてきた名前はかけがえのないものです。
同一性保持権は、こうした作品や名前に対する想いを死後であっても守り続けることを可能にします。
2.誤った情報による名誉毀損を防ぐ
死後、本人の意思に反して作品が改変された場合、誤った情報に基づいて本人の評価が下される可能性があります。
これは、本人の名誉を毀損するだけでなく、遺族にとっても大きな苦痛となるでしょう。
同一性保持権は、こうした事態を防ぎ、本人の真の意思を後世に伝えることに役立ちます。
3.家族間の争いを防ぐ
死後、遺産分割などに関するトラブルは、家族間で争いの種となることが少なくありません。
作品や名前の権利についても、明確な意思表示がないまま放置しておくと、遺族間で意見が対立し、争いに発展する可能性があります。
同一性保持権について事前に話し合い、意思表示しておくことで、こうしたトラブルを未然に防ぐことができます。
終活における「同一性保持権」の具体例
◆著作物◆
小説、絵画、音楽作品、写真、ブログ記事など、自分が作成した著作物について、死後どのように扱われたいかを明確にしておくことが重要です。
具体的には以下の点を検討することができます。
・作品の公開、非公開
・作品の改変の可否
・商業利用の可否
・著作権の継承先
これらの意思表示は、遺言書や信託契約書などに記載しておくことをおすすめします。
◆名前◆
死後、本名の使用や、芸名・筆名などのペンネームの使用について、どのようにしたいかを考えておくことが重要です。
具体的には、以下の点を検討することができます。
・本名の使用許可
・ペンネームなどの使用許可
・商標登録の取り消し
これらの意思表示も、遺言書や信託契約書などに記載しておくことをおすすめします。
まとめ
同一性保持権は、終活において自身の「死後」どのように扱われたいかを考える上で重要な権利です。
作品や名前に関する自分の想いを守り、誤った情報により名誉毀損を防ぎ、家族間の争いを防ぐために事前にしっかりと意思表示しておくことが大切です。
遺言書や信託契約書などを活用し、自身の意思を明確にしておきましょう。