2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。
これまでは任意だった為、相続登記がされていない不動産が全国に約600万件あると推計されています。
義務化により、相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。
こちらのコラムでは、そもそも相続登記とは何か。相続登記をしなければどうなるのか。義務化になった背景などをご紹介します。
相続登記とは何か
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の所有権を相続人に移転するための登記です。
また登記とは、法務局が管理する登記簿に、不動産の所有者や担保権などの情報を記録する制度です。
空き家が増え続けている日本
相続登記義務化の背景に「空き家問題」があります。
空き家問題とは、所有者がいない、あるいは所有者がいても管理や活用されていない空き家が、社会問題となっていることを指します。
日本では、少子高齢化や人口減少に伴い、空き家が増加しています。
2018年時点で、空き家の数は約848万戸と推計されています。これは、、総住宅数(約6,240万戸)の約13.5%に相当します。
国土交通省の調査によると、居住目的のない空き家は、この20年で1.5倍に増加し、今後も増加する見込みです。
空き家が増えると、どんな問題が起きるのか
空き家が放置されると、次のような問題が発生する可能性があります。
・老朽化による倒壊や火災のリスク
・景観や衛生環境の悪化
・犯罪の温床化
・近隣の不動産価値を下げる
・地域の過疎化に繋がる
空き家問題の原因は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、高齢化社会の進展による相続問題です。団塊世代の相続が進む中で、空き家を相続した人が、管理や活用の方法を決められないまま放置してしまうケースが増えています。
2つ目は、経済的な理由の空き家です。地方の人口減少や過疎化に伴い、空き家となった住宅を維持・管理する費用を負担できずに、放置してしまうケースが増えています。
2024年4月1日から「相続登記義務化」がスタート
これまでは相続登記が任意だったため、相続後も登記変更されずに所有者不明となった不動産が増えてしまいました。
所有者不明となった不動産や土地が増えると起こりうる問題は前項でご説明しましたが、このような背景から、今後は法改正により2024年4月1日相続登記の申請が義務化されます。
不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由なく相続登記の申請をしなければ、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。
相続登記の義務化によって、何が変わるのか?
相続登記義務化によって、以下の点で変化することが期待されています。
◆所有者不明土地の解消
相続登記義務化により、相続登記をしないまま放置されるケースが減少し、所有者不明土地の解消が進むと考えられます。
所有者不明土地は、固定資産税や都市計画税などの税金が滞納される可能性があるほか、土地を荒廃したり、犯罪の温床になったりするなどの問題を引き起こしています。相続登記義務化により、これらの問題の解消が期待されています。
◆空き家問題の解消
相続登記することで、空き家の所有権が明確になり、空き家の売却や活用がしやすくなります。相続登記義務化により、相続登記をしないまま空き家を放置するケースが減少し、空き家問題の解決が進むと考えられます。
◆不動産取引の円滑化
相続登記をしていない不動産は、売買や抵当権の設定などの不動産取引に制限が生じます。相続登記義務化により、相続登記をしていない不動産の取引が円滑化されると考えられます。
◆相続トラブルの防止
相続登記をしていない場合、相続人同士で所有権をめぐるトラブルに発展する可能性があります。相続登記義務化により、相続登記をしないまま相続が開始されるケースが減少し、相続トラブルの防止が期待されます。
相続登記義務化は、不動産に関するさまざまな問題の解決につながることが期待されています。相続登記をすることは、相続人や社会全体にとってメリットのあることです。相続が発生したら、速やかに相続登記の手続きを行うことをおすすめします。